50代から読む金融学の入門書|植田和男『大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる』は金融初心者向きか

大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる

著者:植田和男

出版社:KADOKAWA(角川文庫)

金融の基本、銀行、金利、債券、株式、金融政策、国際金融などの知識をざっと吸収できる金融学の入門書です。

なぜこの本を手に取ったのか

現日銀総裁の植田和男氏の書いた本というのが大きいです。東大名誉教授の時代の著書ですが、金融のプロ中のプロがどんな解説をするのか興味がありました。約30年間経済学部で教えてきたことをまとめたと冒頭で書いておられます。

政策金利、利上げ、金融緩和、ニュースでいろいろな用語がでてきますが、どういう意味なのかわかっている方は、意外に少ないのかも知れません。金利は何で決まるのか、銀行はどんな役割を果たしているのか、なぜ日銀の政策で市場が動くのか、知らないよりは知っているほうがいいです。

本書は、金融学を学ぶ大学生向けに書かれており、50代以上の方には難しい箇所もあるかもしれません。しかし為替レートはどうやって決まるのか、などは知っておくべき内容です。投資を始めたあとでも遅くはありません。ざっくりとでいいので基本を押さえましょう。

どんな本なのか

金融入門、ファイナンス入門、金融論の応用の3本立てで解説されています。

第一部では、お金を余らせている人から必要としている人へ回す「金融」の役割について述べています。銀行、預金、貸し出しの仕組みについても説明されています。第二部は、現在のお金と将来のお金の価値の違い、金利、債券や株式の価格がどうやって決まるのかというファイナンスの話です。投資に興味があるなら、ここが読むべきパートになります。第三部では、日銀の金融政策、国際金融、デリバティブ、電子マネーなど、ニュースで耳にするテーマも取り上げられます。

金融学は奥が深いです。タイトルに「ざっと学べる」とある通り、金融の幅広いテーマを最低限の説明でまとめたという印象が強いです。テーマひとつに1ページを割き、それに図解を加えるという構成です。

投資初心者はすべてを理解できないかもしれません。高校卒業程度の知識があればだいだい理解できる、と植田氏は説明していますが専門的な内容は難しかったりしします。難解なページは読み飛ばす。気になる章だけを読み、ああ、金利とはこうやって決まるのだな、と自分の知識とする。そんな参考書的な使い方でいいと思います。

50代の僕たちが受け取れる3つのこと

  • 金利は、預金・ローン・年金生活のすべてに関わる
    金利は政策金利や国債の金利で変わってくるのですが、それにより僕たちの生活は影響を受けます。預金の利息、住宅ローンの金利、企業融資の金利、奨学金の金利、そして物価や株価にまで影響するんですね。お金持ちは金利にとても敏感です。チェックを欠かしません。金利は大事だということを知っておいてください。
  • 金融ニュースの内容が理解できるようになる
    金融にはある程度の法則があります。例えば円安になると、日本の株価が上がるといったことです。複雑な要因が絡むので必ずしもそうなるとは限らないのですが、だいたいの法則がこの本を読むと見えてきます。
  • 投資に関しても言及している
    第二部のファイナンス入門は、利回りのいい資産は何? というテーマで始まります。リターンとリスク、ポートフォリオなどの説明もされています。数式がでてくると一気に難解になりますが、基本的な知識を得ることができます。

僕が一番考えさせられたこと

冒頭で述べられている、金融学はお金儲けのための道具ではないという指摘でした。それでいて仕組みを学べば、お金儲けに役立つと書いています。

金融の基礎をマスターすれば、それをベースにして投資に活かすことができる。僕はそういうふうに解釈しました。もちろん、オルカンを買って放置、の投資でもいいんですが、金融の構造を知っておくべきだと改めて思いました。

初心者向けか?

「10時間でざっと学べる」とありますが、10時間で身に付くという意味ではありません。初心者向けではないと思います。

特に、オプションなど金融派生商品のあたりは、一度読んだだけでは頭に入らないかもしれません。みなさんが買うのは現物か多いと思いますが、先物の変化も現物市場に影響を与えます。その点で無視できません。ざっくりとでも知っておくべきです。

まずは金利、日銀の金融政策に関する章だけでも十分です。わからない言葉に出会ったときの「調べる地図」として手元に置くといいでしょう。知識を少しずつ高めていけば、いずれすべてを理解できるようになると思います。

正直な感想

良い点預金や銀行といった身近な話から、金利、債券、株式、日銀の政策まで学べる。金融ニュースを理解する土台として役立つ。
良い点現在の日銀総裁が、大学で金融学を教えていた頃の視点に触れられる。30年間の講義のまとめなのでとても丁寧。
注意点投資初心者が最初に読む一冊としては、やや難しい。日銀総裁の解説を読みたいというこだわりがなければ、もっと内容をかみ砕いた本を選んだほうがいいかもしれない。
注意点金融制度や日銀の政策は日々変化している。基本的なロジックはともかく、情報が古いものもあるので、必ず最新の情報で補完したい。

50代の読者へ
金融全般を広く学ぶ本です。オルカンほったらかし投資で、あとは何もしないでもいいですが、金融リテラシーは高いに越したことはありません。この本を理解できれば、世の中の金融の動きはだいたい追えるようになると思います。

こんな人に向いている

  • 日銀、利上げ、円安、国債の利回り上昇などのニュースを理解したい人
  • 投資信託や株式の本を読み、金融の仕組みも知りたくなった人
  • 金利に敏感になりたい人
  • 難しい内容でも、時間をかけて金融の基礎を身に付けたい人

まとめ

『大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる』は、手軽な投資の実用書ではありません。金融の仕組みを、腰を据えて学びたい人のための入門書です。

現日銀総裁の植田氏の大学教授時代の見方や考え方が知りたい方は、読んだほうがよいでしょう。

株価の動きは予測できないとはいえ、金融の仕組みを知れば、金利が上がったから株価が下がったのか、と理由付けがしやすくなります。これはみなさんの投資方針の一助となると思います。

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