50代から始める投資の教科書|山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』を読んで考えたこと

投資を始めた。いつもお金を増やすことばかり考えている。これでいいのだろうか。

50代になると、こういう気持ちが顔を出してくることがあります。老後資金は足りるのだろうか。あと何年働けばいいのだろうか。子どもに何を残せばいいのだろうか。そもそも、お金は何のためにあるのだろうか。考え出すと、きりがありません。

前回は、山崎元さんの『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』を紹介しました。投資の最初の一歩を踏み出すのに、適した一冊と言えます。

今回紹介する『経済評論家の父から息子への手紙』は、趣が少し違います。投資のやり方だけでなく、働き方、稼ぎ方、資産運用、そしてどう生きればいいのかという難しいテーマにまで踏み込んでいます。父親が息子に語りかけるような形で綴られた一冊です。

経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて

著者:山崎 元

出版社:Gakken

本書は、大学に合格した息子へ送った手紙をもとに、闘病中の山崎さんが書き下ろした最後の一冊です。

なぜこの本を手に取ったのか

山崎元さんの本は、金融商品を売る側の理屈ではなく、個人が損をしないためにどう考えればいいか、という立場で書かれています。僕が山崎さんの本を何冊も読みたくなるのは、そこに理由があります。

ただ、今回この本を読んで心に残ったのは、投資の結論そのものではありませんでした。

お金を増やすことを目的にしてしまうと、数字に振り回されてしまう。資産額が増えたからといって、不安が消えるとは限りません。特に50代以降は、働ける時間も、健康も、家族と過ごせる時間も、若いころとは違います。

だからこそ、お金の話と人生を切り離して考えることはできない。本書は、そこに切り込んでくる本でした。

どんな本なのか

本書は、著者が大学に入学した息子へ送った手紙から始まります。そこには、働き方や稼ぎ方、お金の増やし方、資産運用の基本、そして人生で大事にすべきことが、飾らない言葉で綴られています。

扱っているテーマは幅広いものの、専門書のような難しさはありません。もともと若い読者に向けて書かれているので、言葉はとてもわかりやすいです。50代以上の僕たちにも、考えさせられる部分が数多くあります。

子どもに伝えたいことは、実は自分自身がまだ達成できていないことだったりします。そう思いながら読み進めると、この本は「息子への手紙」であると同時に、僕たち親世代への手紙のようにも思えてきます。

50代の僕たちが受け取れる3つのこと

  • お金は目的ではなく、人生を自由にするための道具だということ
    資産の金額だけを追いかけていると、判断を誤ることがあります。何にお金を使いたいのか、どこに不安の根っこがあるのか。そこをはっきりさせるべきだと、本書は語りかけてきます。
  • 資産運用は、働き方や生活設計と切り離せないということ
    投資さえしていれば人生がうまくいく、というわけではありません。これからも働き続けるのか、生活費はどれくらい必要か。家族とどんな時間を過ごしたいか。資産配分を考える前に、こういうことを先に考えるべきだと諭してきます。
  • 子どもに残すべきものは、お金だけではないということ
    50代になると、子どもの進学や就職をきっかけに、お金の話をする場面が増えてきます。知識や判断の基準を伝えることも、親が子どもに残す資産となります。

僕が一番考えさせられたこと

投資の本を読むと、「何を買うか」に意識が向きます。もちろん、それも大事です。

でも本書を読むと、その前に「自分は何のために働き、何のためにお金を持つのか」を考えるべきだと、気付かされます。

僕自身、手取りの多くない生活のなかで、こつこつと資産を作ってきました。お金があるからといって、病気や老後への不安が完全になくなるわけではありません。実際、僕は治らない病気を抱えています。それでも、お金があることで選択肢は増えると感じています。

働き方を変える。身体を酷使しない。家族と過ごす。海外旅行をする。目的を果たすためにお金を増やす。その順番で考えられれば、資産運用も人生の味方になってくれるはずです。

正直な感想

良い点 投資だけでなく、働き方や人生、幸福までを一つの流れで考えられる。難しい言葉が少なく、すっと読み進められる。
良い点 著者が若い息子へ本気で伝えようとしているため、机上の一般論で終わっていない。
注意点 制度の細かな解説はなく、個別の金融商品を選ぶための実用書にはなりにくい。NISAのしくみや商品比較を知りたい人は、別の入門書や最新の情報も合わせて確認したい。
注意点 本書の投資に対する考え方はわかりやすいが、実際にどう判断するかは、年齢、資産額、年金、家族構成、健康状態によって変わる。
50代の読者へ
この本に書かれた考え方を、そのまま自分に当てはめる必要はありません。あくまで判断材料の一つとして読み、自分の生活費、働き方、家族、健康を軸に考えていただければと思います。

こんな人に向いている

  • 投資は始めたはいいが、数字ばかり追い求め、目的を見失いかけている人
  • 子どもにお金や働くことの意味をどう伝えるか悩んでいる人
  • 50代からの働き方や老後、資産運用を一緒に考えたい人
  • 山崎元さんの考え方を、投資以外の面からも知りたい人

まとめ

『経済評論家の父から息子への手紙』は、投資でいくら増やせるかを教える本ではありません。

お金をどう稼ぎ、どう増やし、どう使えば、人生を自由にできるのか。そのことを、まっすぐに伝えてくる本です。

50代は、まだ働き方も暮らし方も変えられる時期です。お金と人生をひっくるめて考えたい方には、手に取る価値がある一冊になると思います。

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